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東京高等裁判所 昭和44年(ラ)19号 決定

抗告人 関谷建設株式会社破産管財人 平川巴

主文

原決定を取消す。

本件競落はこれを許さない。

理由

本件抗告の趣旨及び理由は別紙記載のとおりである。

よつて案ずるに、本件記録によれば、原決定の目的物件たる原決定添付別紙目録(一)記載の土地及び(四)記載の建物はいずれも関谷邦松の所有であり、同目録(二)及び(三)記載の土地はいずれも千葉みんこの所有であり、同目録(五)乃至(七)記載の建物はいずれも債務者関谷建設株式会社の所有であること、原審裁判所は債権者川崎信用金庫の右土地建物に対する競売申立に基き競売開始決定をし、右土地建物を一括競売に付することにして手続を進め、右土地建物を一括して競売価額金二千四百十一万円で競落することを許可したことが認められる。しかしながら右の如く

所有者の異る土地建物を一括競売に付するときは各土地建物の価額を確定するに由ないため、後に物上保証人である前記関谷邦松及び千葉みんこが債務者関谷建設株式会社に対し求償権を行使するにつき求償額が判明せず、その行使に支障を来すことが明らかである。従つて右土地建物を一括競売に付することは許されず、少くともこれを各所有者別に区分して個別競売に付すべきものである。

また本件記録中の鑑定人安斉徳治の評価書添付の図面によれば、右目録(一)及び(三)記載の土地と同目録(二)記載の土地とはその間に幅員六米の道路が存在し一連の土地として存在するものでないことが認められるのであつて、そうだとすれば前者の土地と後者の土地とは自らその利用価値を異にするものというべく、従つてまた右(一)記載の土地の上に存在する同目録(六)記載の建物及び右(一)記載の土地と(三)記載の土地の上に跨つて存在する同目録(四)記載の建物と右(二)記載の土地の上に存在する同目録(五)及び(七)記載の建物とも利用価値を異にするものというべきであり、そうすると右土地建物の価額にも自然差異が存するものといわなければならない。他方本件記録を通覧しても本件土地建物が有機的に結合し一体として存在し、これを一括競売に付さなければ著しく価額の低落を来し、債権者並びに債務者所有者等の利害関係人に著大な損害を与える結果となる特段の事情の存在も認められないのであるから、右土地建物を一括競売することは許されないものというべく、これらの点を勘案すれば結局右目録(五)及び(七)記載の建物はこれを一括競売に付することが許されるが、その他の土地建物は一括競売することは許されず、個別競売をなすことが法律上の売却条件であると解しなければならない。然らば原決定は競売法第三十二条第二項の規定において準用する民事訴訟法第六百七十二条第三号前段所定の場合に該当し、取消を免れず、本件競落は許すべきでなく、原審裁判所は更に競売期日を定めて手続を続行すべきである。よつて主文のとおり決定する。

(裁判官 浅賀栄 岡本元夫 鈴木醇一)

別紙

抗告の趣旨

原決定を取消す。

本件競落は之を許さない。

との御裁判を求める。

抗告の理由

一、原裁判所は別紙目録不動産につき一括競売の手続をとり、昭和四三年十二月十八日の競売期日に於て、一括競売に付せられ代金二千四百四拾一万円也にて競落せられた。

二、然し乍ら別紙目録土地建物は夫々所有者を異にするものであるから、剰余金の生ずる見込のありなしに不拘、之を各個に競売することを要するものといわねばならない。

蓋し、一括して競売すると、後日求償関係(民三五一条、五〇一条、一、三、四項)に支障を来すことは極めて明白であるから、所有者が異なるときは各個競売を要するものといわねばならない。

三、特に本件に於ては債務者である関谷建設株式会社は横浜地方裁判所川崎支部に於て、破産宣告を受け、現に破産手続進行中であり、担保提供者である各債務者より、求償債権の申出があつてゐるものであるから、各個の不動産につき、競売価格が確定しないと、右求償債権の認否にも当然、影響するものであり、原決定は、売却の法定条件に欠くるところある違法があるというべきである。

従つて、原決定の取消を求めます。

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